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彫刻家、八木麟太郎 (やぎりんたろう) の、公式ホームページです。

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私達生物は、遺伝子に支配されている

ドイツ詩人エルンスト・マイスターの最後に読んだ詩「おおベランダの花達よ」の最後

「・・・・・・・・お前たち他者も、そこに生きている。」

新型コロナウイルスが、あっという間に世界中に広がった。環境により適応するために短期間で自らの遺伝子を変異させながら拡散している。最小、最単純の生命体の生存本能は驚きだ。「ウイルスよ、お前たち他者も、そこに生きている。」

「人(生物)は遺伝子に支配されている。」という人がいる。

生命が危険にさらされた時や、自分の子孫を繁栄させようとする時、遺伝子に組み込まれた情報によって、利己的な本能が、むき出しになる。自己第一、自己中心的考えや行動は、生物では自然な行動だ。しかし逆に、その反対の行動ができる人もいる。


 4億年の蓄積


魚類が生まれて、約4億年になるといわれている。

4億年の時間の中で鯖(さば)という種は、生き残りをかけて、祖先から受け継いできた遺伝子に組み込まれた情報をもとに、種を存続繁栄させてきた。

そして、4億年かけて、さらに変異させ、更新して、ついに体表に自分達の生きてきた環境風景を取り込んだ。体の上部は、上空から鳥に食べられないように、波の模様と色。下部は下からより大きな魚に食べられないように空の色に変異したと、思われる。生物の行動には個体の意志と、種 (遺伝子) の意志がある。

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「私達は遺伝子に支配されている。」 ということを考えてみる。


新型コロナウイルスは、中国武漢で人に感染してから、日本・ヨーロッパ・アメリカ、そしてヨーロッパから日本へと、世界中を廻りながら拡散している。

中国で確認されてから2020年7月には変異したウイルスが18種発見されている。

2020年8月には東京型とか埼玉型に変異したウイルスがあると言われている。

ウイルスは遺伝子だけで、自ら繁殖することが出来ず他の生物の細胞の中に入りこみ、その細胞の分裂とともに増殖していくしか出来ないので、生命体とも言えないような存在であると言われている。


ウイルスの遺伝子も私達の体の中の遺伝子も自己認識は無い。 私達は自分の体の中にある遺伝子を感じることはない。

私達の細胞の中の遺伝子は、「我々遺伝子は、ここにいるよ。」とか、「我々遺伝子は、この様にしたい。」というような自己主張はないので、ウイルスの遺伝子も、自己認識はないと思われる。目に見えない微小なウイルスであるのに、子孫を繁栄させるための本能の強さや、増殖する方法の巧みさは、驚きである。我々人間もまた同じく、生存欲、食欲、性欲の本能は強く、これらの欲をおさえることは出来ない。生物の個体は、自分達の種が繁栄できるように、環境情報を集めて変異を繰り返し、環境に適応してきた。生物の個体は、自分の子孫を繁栄させる事だけに生きている。そして環境情報を集め、集積して、次世代にその情報を遺伝子をとうして反映させる。

その意味では、「生物は遺伝子に支配されている。」と言える。

生物は遺伝子によって支配されている。


遺伝子によってプログラムされた生と死をいくつかの生物で見てみる。


昆虫、アリの場合

日本では280種類近いアリが生息している。

女王アリは性別の生み分けができる。

春になり新しい女王アリを誕生させ、新しい群を作るときにだけ、その女王アリを結婚させるために既存の女王アリがオスを生む。この時期に生まれるのが羽アリと呼ばれる種類。この羽アリは巣から出て飛び立ち他の巣のアリと結婚し、新しい群を作る。メスの羽アリは女王アリとなる。

オスの羽アリは交尾が終ると1年足らずで死ぬ。

メスの羽アリは交尾を終えると、自分の羽をむしってしまう。羽は交尾をするパートナーを探すためにしか利用しない。むしったあとは地中ですごす。メスの羽アリはオスの精子を体内に貯蔵し巣を掘り、女王となったのち、長い場合は10年以上生きて、巣の中で一生子供を生み続ける。

働きアリはすべてメスで1年~2年生きている。

アリの集団生活、社会性、新しく女王アリになるメスと、そのパートナーとなるオスに羽があり、空中で交尾行動をする。女王アリは一度交尾すると一生土の中で玉子を生み続ける。

玉子は幼虫になり、マユを作り、サナギになり、そして成虫になる。この変態すること、自分の体の形が全く変わってしまう。その様な複雑なプログラムが遺伝子の中にある。人間と比較すると、信じがたい不思議なことだ。


魚、サケの場合

冬に川底の砂利の間で生まれる。しばらく砂利の間で暮らし、稚魚に成長すると、春にかけて海へ下る。

1~2ヶ月沼岸で成長し、オホーツク海へ向かい、夏から秋まですごし、東へ向かい次の年にはベーリング海に入る。秋にはアラスカ湾へ行き冬を越す。春になるとベーリング海にもどる。これをくり返し、3~5年海で育つ。そして、卵を産むために、生まれた川にもどってくる。

川を上り、底が砂利でわき水があるところをさがし、メスは卵を産むくぼみをほり、そこにオスが寄りそい、産卵、放精する。産卵が終ると7~10日でオスもメスも死んでしまう。

なぜ経験もないのに、海へ下り、広い海を廻遊しまた、どのように探して産まれた川に帰ってくるのか?

ベラの場合

ベラは日本の沼岸の南から北まで広く生息している。ベラの不思議なことは、性転換することだ。

群の中で一番大きな個体がオスに性転換する。そのオスが、他の群に合流したときに、より大きなオスがいたときは、またメスにもどる。

キューセンというベラの種は、生まれた時はメスで赤、ピンク色であるが、大きくなり群の中で一番大きくなると、オスに性転換し、体色は青、緑色に変る。

動物、ライオンの場合

魚のベラの場合は、体の一番大きなメスがオスに性転換するので、オス同志の勢力争いはないが、ライオンの場合はオスの子ライオンは、ある時期に群から追い出される。そして、このオスライオンは放浪し自力で生きる。力をつけた放浪オスライオンは、自分の子孫を残すために群のリーダーのオスライオンを追い出す死闘をする。結果、リーダーを追い出すことに成功した新リーダーは、前リーダーの子を殺し、自分の子を生ませる。子育て中のメスライオンは発情せず、交尾はしない。強い新しいリーダーに子を殺されたメスは、新しいオスを受け入れ、そのオスの子を生む。


植物の場合

10年以上前、植物学のニュースで、「すべての地上の植物は、ただ一種類の淡水の藻から発生した。」ということが発表された。

自然の中で変異し、環境に合わせて進化した植物の場合、1年で世代が交代するもの、から数千年生きて子孫をふやし続けるものまで、寿命の長さでも、大きさでも、幅広く、たくさんの種がある。植物においては、自然による変異、進化でなく、人による品種改良が行われて来た。

現代においては、人は植物の遺伝子の組み変え技術を持ち、新しい種を作り出すまでに至った。

人の場合

人もまた祖先から受け継いだ遺伝子により形作られ、生まれてくる。人においては、どのように遺伝子に支配されているか?

他の生物の遺伝子による本能的な行動から、人の行動も類推できる部分も多い。子孫を繁栄させる本能は同じで生きる目的である。利己的な本能による行動は、事件、犯罪の動機の中や、地域エゴ・国家エゴと呼ばれる行動の原因の中に、見ることができる。しかし人間の場合、生きる目的が他の生物と違ってきている。

2014年Natureに発表された京都大学の論文。

50年間のチンパンジーの観察研究でチンパンジーに「同種殺し」が見られた。霊長類では人とチンパンジーだけが同種殺しをする。この研究が進めば「なぜ人は人を殺すのか? 戦争をするのか?」のメカニズムが解明されるのではないか。

人とチンパンジーの遺伝子は99%が一致、人と犬は80%、人とバナナは50%が一致と言われている。

人と他の生物の違いについて、哲学者は、「動物は神の存在を知らない(認識しない)が神に最も近い行動をする。人は神を知っているが、神とは遠い。」という。人が他の動物と、どんどん違って来ている。

現在、人は自分達自身の遺伝子の全ての情報 (人ゲノム) を読み取っている。植物の遺伝子組み変えでは、病気、害虫に強い種を作ることができるようになり、人の遺伝子を組み変え、遺伝病の予防に使用するところまで進歩している。この技術の乱用を恐れ、規制を考えなければならないところまで、科学技術は進歩した。


人、(生物)の起源について考える。


人体を構成する元素は、

酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リン、硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素、マグネシウム、鉄、フッ素、ケイ素、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、鉛、マンガン、銅、アルミニウム、カドニウム、臭素、スズ、バリウム、チタン、水銀、セレン、ヨウ素、ニッケル、モリブデン、クロム、ヒ素、バナジウム、コバルト、金、

なんとヒ素などの毒も微量、私達の体内に必要とは、おどろきだ。


2014年国立野辺山天文台で、アミノ酸が生成される前の段階の物質メチルアミンが、豊富にある天体を見つけた。アミノ酸は生物誕生には欠かせないタンパク質の合成に必要だ。

また、隕石の中から70種類を超える地球外起源のアミノ酸が検出されている。

地球の生命の起源、人類の生命の起源は、地球上にあった元素とアミノ酸であり、そのアミノ酸は、隕石がもたらしたアミノ酸である可能性がある。


遺伝子は生物が生き残りをかけ、繁栄していくための、集積記録だ。

「人、(生物)は、遺伝子に支配されている。」このことの逆を考えてみる。


生物は遺伝子に支配されていると言えるが、遺伝子が変異していくのは、どうしてか?

生物の個体が、環境の変化に応じて自分の遺伝子を変異させて、次の世代に伝える。

このことを考えると、生物の個体は、遺伝子に支配されている面もあるが、新しい情報を遺伝子に組み込むということでは、逆に個体が遺伝子を支配している面もある。

その例として、ヨーロッパでエイズウイルスの抗体を持っている人達がいることが発見された。

研究者は、中世にペストが流行した時に、一部の人達に抗体ができ、その遺伝子を受け継いだのではないか?と推測している。そして、そのペストの抗体がエイズウイルスにも作用していると思われている。

この例のように、「このように有りたい、こうなって欲しい。」と、強く念じ続ければ、私達も自分の、遺伝子を変異させて、遺伝情報を組み換えることが可能と考えられる。


「新型コロナウイルスとの戦い」という言葉が、ニュースでよく流れる。逆に人類が絶滅に追いやっている生物もたくさんある。人類によって絶滅した生物にとっては、「人間との戦いに敗れた。」という事だ。

イタリアの小説家パオロ・ジョルダーノ氏は、「コロナの時代の僕ら」 というエッセイの中で、次のように言っている。

「新型コロナウイルスの感染流行は全て僕たちのせい」

「今後、未知のウイルスの感染流行は頻発するだろう」

「人が環境を破砕してウイルスの生きている領界を破壊しているから」

「感染症とは、僕らのさまざまな関係を侵す病だ。この災いに立ち向かうために僕らは何をすべきか?」

地球の温暖化により、シベリアの永久凍土が溶け出し、そこに閉じ込められていたウイルスが活性化し鳥や野生動物により運ばれる。

そして、経済のグローバル化により、人の移動が地球規模で広がっている。感染症が発生すれば、感染拡大は地球規模に拡がる。今回の新型コロナウイルスの感染流行拡大は、都市の封鎖や人々の交流も断ち切る。そのことは、現代社会の人間関係と、環境との関わりを、浮かび上がらせた。

新型コロナウイルスは、人類は今どのように生き、何を次の世代に残すか?という問題を突きつけている。

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